Prime Minister Mahathir
マハティール首相について
 フリースタイルスキーやフリーライドを愛好する若者には茶髪が多い。これは日本の西欧化を表す事象の一つだと思う。つまり、白人になりたい若者が多いのだ。
 わたし自身、若い頃アメリカへの指向が強かった。またドイツやオーストリアの芸術を愛好するため、ヨーロッパへの傾倒も強かった。つまり、西欧指向であり、自国文化への愛情に乏しかったと言えるだろう。
 しかし、アメリカの占領政策に興味を持ち、それを独学し、また自国の歴史をより詳細に知るようになった今、十代の頃とは大きく違う歴史観を持つようになった。

 そんな中でわたしが注目する政治家の一人。それはマレーシアのマハティール首相である。
 歯に衣着せぬ発言で有名であるが、その発言には正直驚かされることが多い。
 2002年10月におこなわれた経済フォーラムで、マハティール首相は日韓両国について意見を求められ、次のように発言している。
「マレーシアは日本に注目している。しかし、それはお手本としてではない。衰退しつつある東アジア経済の『発電所』の失敗例を研究するためだ」
PrimeMinisiter_Mahathir
 マハティール首相は1981年、「ルックイースト」政策を打ち出した張本人である。これは「近代化や経済発展を日本に学べ」というものだ。しかし、今になり「日本は反面教師でしかない」との見識を示したことになる。

 マハティール首相の批判は日本の若者にも触れている。
「日本の若者は西洋にかぶれている。わたしはかつて、これだけ多くの日本人が、髪を金髪に染めているのを見たことがない。そして日比谷公園に行くと、いつも音楽に合わせてダンスに夢中になっているのを目にする。わたしは古い人間なのかもしれないが、こうした出来事を理解できない」
 そして、アジア諸国に対して、次のように呼びかけている。
「もし、あなたの国がこんな文化のまねしたならば、あなたの国は衰退する。われわれが日本を注目するのは、日本の間違っている点を見て、そうした過ちを犯さないためだ」
 そして、自国にもはじまっているアメリカナイぜーションに憂いを示した。
「マレーシアでもピアスをして破れたジーンズをはいた若者を見かけるようになってきている」

 そんなマハティール首相は日本について、次のようにも述べている。
「戦後、日本人は経済復興のために一杯の米飯の手当だけでも懸命に働いた。その結果、日本は成功した。日本国民の勤勉さ、会社に忠実な労働者、労働者を気遣う上司。こうした特性や価値観こそ、我々がまねようとしたものだ。しかし、今の日本の若者は西側の価値観に身をゆだねている。だから、無責任な行動を起こしているのだ。自国の優れた価値観を、若い世代に浸透させるよう努めるべきだ。そういうことをマレーシアでやりたいと我々は考えている」
 こうしたマハティール首相の言葉に、わたしは立ち止まらざるを得ない。
 しかも、日本人であり、茶髪や金髪の若者たちのまっただ中に身を置く者として、わたしはたくさんの相反する感情をも感ぜざるを得ない。
 なぜなら、マハティール首相が言うほど、ことは単純ではないのだ。

 ただひとつだけ、わたしにも言えることがある。
 それは歴史の真実を失った人間は魂を失ったに等しいということ。
 日本の若者は歴史を失っている。歴史から遠ざけられ、隔離されている。しかし、それは大人だけの責任ではない。若者自らの責任でもあるだろう。
 わたし自身、自分の根がどこから来て、どこに伸びようとしているのかを知ろうとすればするほど、深いエネルギーを得ることができる。そして、嬉しいことに日本という国にはすばらしい過去が、すばらしい人間が、たくさん存在したこともわかってきた。

 現在、日本における教育者のみなさんはほんとうに難しい局面にあると思う。しかし、難しく危機的状況であればあるほど、大きな改革も可能なのではないだろうか。
 わたしは日本の若者たちが、そして大人たちが、もう一度自分たちの源泉を取り戻し、再出発すること。そして、過去に立ち返るだけでなく、新しい世界的未来に向かって一歩を踏み出す勇気を持つことを心から願っている。
 かなうならば、そこに微力ながら自分も歩みを示してみたいと願っている。

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 この文章を読んだ古くからの友人が、メールをくれました。
 その内容をぜひみなさんにも知ってもらいたいため、本人の了解を得、リンクページとして紹介させていただきます。彼は現役の教師であり、教育の最前線で働く人間です。そして、人生のいくつかの要所で、わたしに光りを与えてくれる人物でもあります。


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