Sidney Sheldon

BestLaidPlans Morning_Noon_and_Night Rage_of_Angels

 選手時代、よくこう言われた。
「角皆君にはライバルがいないから残念だね」
 そんな言葉を聞くたびに、「きっとライバルがいれば、もっと伸びただろう…」という意味だと思った。
 しかし、幸か不幸か、スキーではライバルだと感じた人はいない。だから自分の最高点まで登れなかったのかもしれないが…。

 しかし近頃になり、強烈にライバル意識を持たざるを得ない人物がいる。それこそ、生涯のライバルであるかのように感じているのだ。
 それがシドニィ・シェルダンである。
 わたしがシドニィ・シェルダンをライバルという時、あなたはどう感じるだろう。それを不遜と思うだろうか、それとも彼があまりのエンターテインメントということで、がっかりされるだろうか。

 彼の本との出会いは25年以上も昔のことになる。
 当時、フリースタイルスキーの選手としてワールドカップをめぐっている時、いつも飛行機の中で読んでいたのが、シドニィ・シェルダンの小説だった。
 その頃、わたしだけでなく各国の選手がシドニィ・シェルダンを読んでいて、よく彼らと作品の感想を話し合った記憶がある。
 初めて読んだのは「A Stranger in the Mirror」である。
 カナダ人のガールフレンドが、飛行機で読むようにバンクーバーの飛行場で買ってくれたものだ。読みながら、「これを翻訳したら、きっと売れるに違いない」と確信した。
 もしかしたら、その道に進んでいたら、スキー以上に成功したかも…。

 彼の作品に、わたしはエンターテインメントだけではない何かを感じる。それが彼を他の作家と区別してくれる。
 好きな作品はたくさんあるが、一番繰り返して読んだのは「The Other Side of Midnight 」だろうか。たぶん4回は読んだはずだ。それから「 Rage of Angels 」も3回は読んだし、「 The Best Laid Plan 」は何度となくテープで聞いた。もちろん、全作品を英語で読んでいる。

 年に数回、兵庫県の大屋スキー場まで長距離ドライブをするが、その時よく聞くテープもシドニィ・シェルダンのものが多い。また、わたしの英語力が今ひとつ伸び悩んでいるのも、シドニィ・シェルダンの英語があまりにも易しいからだ。
 そう、彼の英語は驚くほど簡単なのだ。それは新しい作品ほど、顕著である。初期の作品にはけっこうな語彙が使われているのだが、しだいに基本語だけになっていく…。しかし、それで作品の面白さや深みが失われることはない。

 いつか、彼の作品以上に人を惹きつける物語を書いてみたい。
 まだできあがってはいないそんなわたしの傑作を、みなさんもどうかご期待下さい。

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