民主党・小沢一郎代表の第一秘書逮捕事件
2009年3月9日 by 角皆優人
 幼い頃わたしは、悪い人などいないと思っていた。
 わたしのまわりにいて実際に触れあう人は、みんないい人だった。
 少し大きくなると、「もしかしたら、悪い人もいるかもしれない」と考えるようになった。やがて思春期になると、人はさまざまで、なかには大変なことをする人もいると知った。
 それでもまだ、いい人ばかりだと信じていた。
 中年もすぎる頃、世間の荒波にもまれ、さまざまな体験を経て、ようやく悪意のある人や、どうしようもない人がいることを知った。
 もしかしたら、そんな人たちも人生や社会に追い込まれて、仕方なく悪意を持ったり、悪事を働いたりしてしまったのかもしれない。元々は美しい心を持っていたのかもしれない。個人ではどうしようもない大きな社会的渦に巻き込まれたり、陰謀に巻き込まれたりして、道を誤ってしまったのかもしれない。

 わたしは長い間、日本や欧米の国々を信じていた。
 初めてアメリカで生活した時の感動や、カナダに住んでいた頃の記憶が、どうしてもわたしに性善説を信じさせてきた。
 「ほんとうに悪い人など、ごくわずか」だと…。


9.11
 しかし9.11事件から、わたしは社会の裏側にある巨大な闇を感じるようになった。想像も予想もつかない、巨大な悪が、どこかに潜んでいるように感じはじめた。
 同時に、アメリカへの信仰は消え、巨大な力や権力や武力を、極端に警戒するようになった。

 昔、悪い人だと信じていた田中角栄が、実ははめられて失脚したことを信じられるようになった。自殺した何人かの政治家たちは、実は殺されたと信じられるようにもなった。ケネディの暗殺も、リンカーンの暗殺も、裏側に隠されているものがあることを、信じられるようになった。

 今回の民主党小沢代表の事件も、仕掛けられたに違いないと信じられる。

 メディアは操作され、民衆を操っていると、信じられる。

 どこかとんでもないところに大衆を連れて行こうとする勢力や力が、この日本にも隠れているように信じられる。


 メイフラワー号に乗って、初めてアメリカにやってきた清教徒たちのしたことを思い出すと、こうしたことを理解できるような気がする。
 彼らは、原住民の酋長が恵んだ食糧で冬を越したにもかかわらず、領土を奪い始めた。抵抗した酋長の息子は殺され、その首は20年間もプリマスの港に晒された。彼の妻子も一族も、まとめてカリブの奴隷商人に売られた。
 土地を手に入れた清教徒たちは、女を奴隷市場に買いにいった。奴隷市場の最初の売り物は、140人の英国産の白人女囚だったという。そして、女の次は黒人が商品になった。

 アメリカはベトナム戦争でも、大きなウソをきっかけに戦争をはじめている。
 第二次世界大戦も、日本を陥れて戦争をはじめたとも考えられる。
 ルーズベルトの宣戦布告の演説を聴くと、どこかに黒い闇が感じられる。意図して戦争をはじめたその裏側が感じられる。
 ルーズベルトと反対に、アイゼンハワーの退任演説には、心からの不安が現れている。それは、「軍事機構と軍事産業の合同体(軍産複合体)が、途轍もない力を得てしまうのではないか」という不安と恐怖である。
 国を動かすほどのパワーは、たくさんの人を動かす。それは行動だけでなく、心すらも変えてしまう。
 アイゼンハワーは経済や政治だけでなく、精神にも莫大な影響力を持つであろう軍産複合体の危険性を強烈に謳っている。

 今回の小沢代表の秘書逮捕は、そうした巨大な影が動くのを、かいま見せる事件である。
 各新聞の発表やテレビコメンテーターの話を聴くにつけ、巨大な権力が、わたしたちをどこに連れて行こうとしているのかを感じざるを得ない。
 こうした桁違いの力に、わたしたちはどうすべきなのだろう。
 かつてはマスコミが統制されたが、今はマスコミによって、わたしたちが統制される。
 やはりインターネットの戦士たちに期待すべきなのだろうか。
 ここで、ヒーローが登場することを、わたしは望んでいない。それは新しいタイプの独裁者やファシストの登場へとつながりやすいから。
 しかし、一人一人が成熟する時など待っていられない。
 不況になれば、民衆は生きることで精一杯になる。政治や社会の裏側など考える余裕は消えてしまう。それこそが支配者の戦略であり、彼らはわたしたちを生きるだけで精一杯にし、いらぬことに気づかぬようにしてしまう。そんな戦略に捉えられず、今ほどことの真相を考えるべき時は、歴史になかった。単純な意識操作に操られず、多角的な可能性を常に意識して、わたしたちは生きるべきである。        
Home ホームに戻る