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Tsunokai Masahito's Musical Essay

Kenji

宮沢賢治について

 わたしが音楽について語るとき、
忘れられない人物が三人います。
 ひとりは左写真の宮沢賢治です。
 彼の音楽について書いた文章を読むにつけ、
まるでわたしが書いたものであるかのように感じてなりません。
たぶん、宮沢賢治の音楽体験は
わたしが経験してきた体験と
とても似ていたからではないでしょうか。

 小さい頃、嫌なことがあったり、辛いことがあったりすると、
よく宮沢賢治の本に逃げ込んだ記憶があります。
よく覚えているシーンとして、雨の寒い日、ベッドにもぐり込み、
食べることも外に出ることも拒否し、
賢治の物語に没頭していた記憶があります。

 心が、泣いたり、傷ついたり、血を流したりする時、
彼の書いた文章が、優しくわたしを慰めてくれました。
そんな事実は今もかわっていません。
 宮沢賢治はわたしにとって
たいへん近い存在に感じられてなりません。
いつか、彼の書いたような物語を書いてみたい。
そんな思いがもう三十五年も続いています。 
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Tsunokai Masahito's Musical Essay
HesseHermann Hesse
ヘルマン・ヘッセについて


わたしの人間形成にとって、もっとも強い影響を持った作家が、
ヘルマン・ヘッセです。
大げさな話しではなく、彼の作品は何度もわたしを救ってくれました。
命すら救ってくれたと言ってもよいでしょう。

彼のたくさんの作品を、わたしは人生の転機に直面するたび、
何度も読み返してきました。
そして、そのどんな時にも新しい感動と、
より高い視点とを与えられてきました。

好きな作品には「デミアン」、「荒野のおおかみ」、「シッダールタ」、
「知と愛」、「春の嵐」などがあります。
どれも好きな作品ですが、やはりヘッセが
音楽について深く語る「荒野のおおかみ」「デミアン」、Hesse&Cat
そして「春の嵐」に強くひかれます。

ヘッセは最後までベートーヴェンよりモーツアルトを愛し、
ブラームスを毛嫌いしていました。
しかしもし彼が、
20世紀末を経て21世紀を迎えた現代に生きていたなら、
きっとベートーヴェンだけでなく、
マーラーの世界も理解するようになったような気がしてなりません。
わたし自身、ブラームスやマーラーが好きですが、
彼らの音楽をヘルマン・ヘッセのように感じる感性も理解できます。
ヘッセの時代、世界は大きく変化を続けていました。
その変化には拡大する資本主義経済や二回の世界大戦も含まれていました。
そんな苦しく恐ろしい時代、
ヘッセはあくまでも純粋で自然な人間性を表現する
モーツアルトを理想としていたのではないでしょうか。



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