Lately what I am doing and thinking

吉宮式気功体操
Yoshimiya 近頃、わたしは気功に力を注いでいます。以前も3年間ほどずいぶんやりましたが、その時よりのんびりとした気持ちで、あまり背伸びをせず、極端な期待も持たず、淡々とおこなっています。昔はあたかも奇跡を起こそうとでもするかのように取り組んだ時期がありました。しかし、そんな時期を今になってふり返って見ると、ずいぶん気功の本質から離れていたのではないか、と感じざるをえません。
 気功のよいところはまず気持ちがいいこと。そして、具体的に姿勢や傷害部分が改善されることです。もちろん、それは奇跡と呼べるほどのものではありません。しかし、確実に着実に、やればやるほど体は元気になり、心は澄んできます。
 そんな気功について、わたしなりに書いてみました。
 以下の文章に客観的に述べていますが、その前にわたしにとって、「気」とは何かということを少し伝えたいと思います。
 人間の体には血液が流れ、必要な個所へ養分を補給しています。つまり、人間が生きるのに必要なほとんどのものは血液を媒体にして供給されています。そんな人間の個々の細胞や組織という細部がひとつの存在、…たとえばひとりの個人…だと考えてみましょう。そうしたら、ひとつひとつの細胞にとって血流を見ることや感じることは難しいはずです。しかし、血流はそこにあり、細胞はそれによって生かされています。そのように気は人と地球、もしくは人間と宇宙をつなぐもの…人間だけでなくすべての存在をつなぐもの…、それが「気」だと考えています。
 気はありとあらゆるところに存在し、それをすべての存在が必要としています。
 もちろん、現在の科学で「気」は解明されていません。しかし、そこに「何かがある」というレベルまでは解明されつつあるようです。
 わたしの先生は吉宮照詞さんという方です。中国に気を学んだ方で、マスコミによって数々の科学的実験の対象として紹介されている方でもあります。こうした特殊な世界にいて、特殊な能力を備えた方には珍しく、たいへん謙虚で奥行きのある方です。
 もし吉宮先生に巡り会っていなかったなら、わたしのスキー生命は三十代前半で終わっていたに違いありません。

 もうひとつ、私情を述べておきます。
 それは気功の基礎となる馬歩という姿勢についてです。
 下の写真でブルース・リーが取っている姿勢も馬歩の一種です。この姿勢はあらゆる武道、特に東洋の武道に見られるもので、西洋の格闘技やスポーツには見られないものです。日本には柔道や空手の自然体という観念があり、また相撲にも四股(しこ)という重要な姿勢があります。こうした股関節をゆるめ、腰を落とした姿勢に東洋の哲学があるように感じられてなりません。そして、馬歩から見ると、フリースタイルスキーのモーグルはたいへん興味深いスポーツに見えるはずです。

 フリースタイルスキーについて
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 私のおこなっているスポーツはフリースタイルスキーと呼ばれ、その中には長野オリンピックで有名になったモーグル競技が含まれています。
 モーグルは脚部の屈伸と伸展を過激に繰り返すスポーツです。しかも屈伸姿勢は深く、伸展姿勢は高く、運動の振幅は大きく、スピードは猛烈に速いものです。そのため競技者ともなれば身体に強い負荷を受け、特に膝と腰が受ける衝撃は想像を絶するほどのものとなります。名選手のほとんどが腰や膝に傷害を抱えていると言えば、その程度がわかるでしょう。
 ゆっくりとした東洋的運動である気功体操は一見、筋力を強くしたり、スポーツに必要とされるスピードアップには結びつかないように思えます。気功体操より、やはりバーベルやマシーンを使ったウェイトトレーニングの方が有効に見えるものです。しかし、実際はそうではありません。気功体操は直接的筋力強化に大きな効果があります。それはウェイトトレーニング以上ではないかもしれませんが、ウェイトトレーニング以下でもありません。そして、ウェイトトレーニングとの大きな違いは、競技活動によってダメージを受けた関節、筋肉、腱、靱帯などの修復や正常化に、大きな力を持っていることです。

 気功体操の効果として、わたしは次の点を強く感じています。

1.直接的効果として、大腿部の筋力強化。

2.直接的効果として、屈伸動作の矯正、改善
3.間接的効果として、腰や膝が受ける疲労の軽減
 (慢性的な腰痛や膝靱帯の故障の改善)

4.間接的効果として、情緒・感情の安定。


 第一線で活躍するスポーツマンには故障がつきものです。そして世界レベルに達するためには人間の自然治癒力を無視した、過酷なトレーニングが当たり前になっています。気功体操をおこなうことは重いバーベルを持ち上げて得られるような効果があるのみならず、健康を無視したトレーニングに欠けた何かを補い、健康な体を取り戻す何かが伴っている。そうわたしは感じています。
Lee ひとつおもしろいことがあります。それは理想的モーグルスキーの屈伸姿勢が、まったく馬歩と同じだということ。これは衝撃を足で受け止め、それを腿の筋肉で処理することのできる姿勢であり、それをいかに合理的におこなえるか、という姿勢です。この姿勢が少しでも狂ったなら、スキーヤーは腰や膝に大きなダメージを負ってしまいます。
 わたしはインストラクターや選手たちに、機会あるごと吉宮先生の馬歩ビデオを見せ、これが理想の屈伸姿勢であると伝えます。すると、技術レベルが高かったり、競技成績がよかったりする選手であればあるほど、吉宮先生の馬歩にたくさんのものを見てくれるのです。これはたいへん興味深い現象です。スキーヤーのレベルが下がると、吉宮先生の馬歩に大切な何かを見ることはできません。こうした経験から、人間は自分より下はよく見えても、上のものは見えなかったり理解できないものだと感じています。

 もう一つ特筆しておかなければならないことに第4のポイントがあります。それはスポーツの競争的・攻撃的な心を、静かで穏やかな状態に戻してくれる精神的効果です。これは実際の身体的トレーニング以上に重要なことかもしれません。
 
気という概念

 わたしは腰と膝に大きな故障を抱えながら競技生活を続けてきたため、西洋医学的(整形外科的)治療から民間療法まで、たくさんの対策(治療)を重ねてきました。そんな中でさまざまな経験を経て、「気」という概念にたどり着きました。
 そんな中で吉宮先生に出会い、その指導のもとトレーニングを重ね、それを体感するようになりました。今では自分の身体の内部における「気」の流れや、その滞留なども感じられるようになり、また意図すれば他人の気の流れも感じたり、見たりすることができるようになりました。一般的に気という概念は、現在のスポーツ界では通用しませんが、人間の根元的なメカニズムのひとつだと実感しています。
 私は気を以下のように捕らえています。

 1.
呼吸と密接な関係にあるもの。
 2.血流と密接な関係にあるもの。
 
3.副交感神経と密接な関係にあるもの。
4.個(個人)とすべてをつなぐもの。


 残念なことに現代スポーツの世界では「行きすぎた競争心」や「怒り」「嫉妬」などにより、気が悪い方向に用いられることも多く見られます。そのため、20世紀的な競争スポーツと気功は相性が悪いようにも感じています。しかし、21世紀の本質はそうではありません。21世紀が進んでくると「調和や個性」という「気を大切にするスポーツ」が盛んになるのではないでしょうか。アクエリアスの時代を目前にして、人類はテロや過当競争という20世紀最後の洗礼を受け、試されてもいます。これを乗り越え、調和に満ちた人類の明るい未来を形作るためにも、吉宮先生の提唱される気功体操がより普及してくれれば…、と願っています。
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