Lately what I am doing, and thinking
近頃の角皆優人

スキーの黄金時代?!
The Golden Age of Skiing

 1980年代、スキーは憧れのスポーツだった。
 スキーというだけで、すべてが輝いた時代。スキーバスや列車は満員で、夜行列車に8時間立ってでもスキーに行きたいという人たちが一杯いた。80年代後半にはスキー場建設ラッシュが起こり、全国に700ものスキー場ができ、そのどれもが繁栄した時代。
 しかし今、スキーというスポーツは過去のものとなり、すでに盛りを過ぎたかのように言われている。
 …しかし、ほんとうにそうだろうか。
 上記のようなできごとはバブル期の日本なら、あらゆるレジャーや産業について見ることができたのだから。
 野球やサッカーの人気が落ちないのは、それが「巨大な金脈とつながっているから」だと、わたしは考えている。もし、プロという巨大な産業につながっていなかったなら、10年前のサッカー以上に寒々しい現実があると考えている。
Baseball
 バブル崩壊後、衰退したり消滅したりするレジャー産業。その中で、スキー場の営業成績が落ち込みはじめた時期は驚くほど遅い。バブル崩壊から数年後に、営業成績のピークを迎えている場所も多い。それはスキーというスポーツの魅力が、なかなか汲み尽くせないものであるからだろう。しかし、他のレジャーより遅いタイミングとは言え、日本経済がせっぱ詰まり、厳しさもつのるにつけ、いよいよスキー産業も土壇場に追い込まれつつある。

 わたしには昔から考えていたことがある。それは次のような内容だ。
「日本に700ものスキー場があり、1300万人ものスキーヤーがいるのは不自然なことではないだろうか」
「ふくれ上がったスキー人口は脂肪太りのようなもので、スポーツにとって健康なことではないのではないだろうか」
「400程度のスキー場と800万人くらいのスキーヤーで、十分に健康なスポーツと言えるのではないだろうか」
「ほんとうにスキーを愛する人たちが、人生に密着した形でスポーツを楽しむには、スキー産業をダイエットすべきなのでは…」

 スポーツにはさまざまある。その中にはお金が集まらないがゆえ、魅力を持っているものも多い。反対に、お金が集まるからこそ魅力を持つプロ野球のようなスポーツもある。
 バブル期、スキーにたずさわる人の多くが、スキーにプロ野球やプロサッカーのような姿を夢見ていたように思う。しかし、わたしの夢はそうではなかった。それはもっと落ち着いた姿であり、静かな姿だった。たとえば新雪の朝、ふだんよりリフトがちょっと混んだり、晴れた朝には山頂に初老スキーヤーの姿が多く見られるというものである。
 元々クラシック音楽の好きなわたしは、ゲレンデ音楽に閉口してきた。エリア全体に、ごく限られた分野の音楽だけを流し、派手な放送や広告を繰り返すイメージ戦略。良識外れと感じるほどの安売り競争。もし、わたしがスキーを職業としていなかったら、やはり今のスキー場は魅力に乏しい。それはごく一部の人間だけを相手にしたイメージ作りだと感じるし、そんな一部の人間はすでにスキーから離れていることも知っている。
 だからこの不況こそ、わたしの望んでいるスキー場を生み出すためのチャンスかもしれないと思う。スキーはそれを愛する人たちのスポーツである。じっさいにスキー場に足を運び、滑る人たちのもの。だからこそ、ほんとうにスキーを愛する人たちで、新しいスキー場の姿を夢見てみたい。そして、少しずつでいいから、新生スキー場を実現してみたい。近頃、そんなことを考えている。

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