Ski for Freedom Ballet
Ballet_Video
 世界で唯一存在するバレエスキー・ビデオです。
 韓国でたくさんの方たちから、このビデオについて質問され、驚きました。
 このビデオはわたしに、運命の不思議を感じさせてくれたものの一つです。

 2001年のある日、韓国バレエスキー協会の方から、仕事場に招待されました。
 彼は韓国で高名な陶芸家で、パクさんと言います。韓国スキー界のリーダーであるドクタースパークの弟さんにあたる方です。 陶芸を焼く釜のある趣のある仕事場に、広い芝生の庭があり、そこにバレエポール(ストック)が置かれていました。日本製で、シナノのポールでした。
「わたしはこの庭でポールフリップやアクセルの練習をしています」
 こういうパクさんは、目の前で見事なガッツフリップを見せてくれました。
 伝統陶芸を極める芸術家が、その情熱の裏側に、フリースタイルスキーを秘めていたのです。

 彼が、こんなことを話してくれました。
「韓国のバレエスキーは日本に負っています。なぜなら、日本のビデオや教本から、わたしたちはバレエスキーを学んできたからです」
 パクさんは大事そうに、教本のコピーとビデオを棚から出し、わたしに見せてくれました。
 それは初期のフリースタイルスキー教本とこのビデオでした。
 わたしはこう答えました。
「これらはわたしが中心になって作ったものです。そして、滑っている映像や写真のほとんどが、わたしです」

 それを聞いたパクさんは、長い間、わたしの顔とビデオの写真とを見比べていました。
 そして、わたしを見ながら涙を流されたのです。
「おお、角皆先生。あなたはずっとわたしの先生でした」

 韓国には今でも強い儒教の伝統が生きています。
 そこで先生は一生の先生であり、永遠の尊敬の対称となります。
 パクさんはわたしと同い年。韓国一のバレエスキーヤーであり、韓国一のヘリコプターの名手でもあります。加えて、世界中から個展を開いて欲しいと招かれる陶芸家です。
 そんな彼が、わたしの文章と映像を見ながら、もう15年以上も、バレエスキーをトレーニングされ続けてきたのです。
 わたしにもたった一人で、芝生や砂の上で、ポールフリップを繰り返してきた記憶があります。
 特にルーディに挑んでいた時など、涙を流しながらトレーニングした思い出すらあります。
『…同じことが、韓国の地でおこなわれていた…』
 そう思うと、わたし自身、震えるような感動を禁じ得ませんでした。

 わたしはこのビデオを作った15年後に、もう一度バレエスキーで競技会に出場しました。現在わたしの技術はこのビデオよりずっと高いところにあります。20才代の技術を、50才に近づくわたしが超えることができました。そんな意味もあり、このビデオはわたしの大切な記録であり、記憶であり、宝です。


 右の写真はビデオ撮影時の一コマです。氷の張った湖の畔でポールフリップをしています。湖に近づきすぎ、一回はストックが氷を砕き、あやうく湖に落ちそうになりました。
 確か、中野銀次郎君は落ちたような記憶が…。


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